さがみはら商工会議所会報 2024年5月号 No.597

大手コンビニが仕分けロボット採用

わが社のいち押し

JET(中央区田名)は金属の切削加工業として創業し、現在は設計・開発の機能を高めてロボット事業も展開しています。コンビニエンスストアの物流センターに納入した仕分けロボットシステムは、おにぎりから牛乳のパックまでラインを流れる1000種類近い商品を識別し、店舗ごとに必要な商品を指定の数量だけストッカーに詰めていきます。大手企業に採用された素晴らしいシステムですが、遠藤法男社長の「わが社のいち押し」は、ロボットシステムではなく「システムを生み出す人(全社員)」だそうです。

 同社は1983年に「遠藤製作所」として設立、鋳物材料の切削加工などを手掛けてきました。最新の工作機械・マシニングセンタをいち早く導入するなど積極的な設備投資をしていたものの、業績は厳しい状況だったそうです。
 二代目の遠藤社長は大手金融機関とそのシンクタンクで活躍していましたが、98年に30歳で家業を継ぎ、立て直しに着手。付加価値の高い精密切削加工にシフトし、ハードディスク駆動装置の部品などを手掛けます。また、金融の知識を活かし地域の工業団地の債権問題解決に貢献するなど、中小製造業の改革に挑戦してきました。
 入社から5年間は切削技術の向上に取り組み、その後は仕事の流れの上流である「設計・開発」に事業を拡大。2007年には日本の技術力の象徴となるような会社を目指そうという思いを込め、社名を「Japan Evolution of Technology」の略に変更しました。
 折りから相模原市は国からロボット産業特区の指定を受け、14年には相模原商工会議所を事務局に産学官金が協力して「さがみはらロボットビジネス協議会」を創設、ロボットビジネスの機会創出に取り組みます。JETも中心メンバーの一社として活動し、仲間との共同出資でロボット事業の新会社「トランセンド」を設立しました。

 コンビニエンスストアに採用された物流向け仕分けロボットシステムは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の補助金事業として開発しました。コンビニの商品は、形や大きさ、硬さ・柔らかさ、重量バランスが千差万別。商品をどのように運ぶのか、掴むのか、あるいは吸着させて運ぶのか、ハンドリングがとても重要な要素です。JETでは得意の切削技術を活かし、それぞれに必要な多種多様な「ロボットハンド」を開発、ロボット自身がカメラの目で商品を識別して自動でハンドを付け替えるシステムを構築しました。
 ベルトコンベアのラインに6台の多関節アームロボットを配置、ストッカーの空きスペースも認識して隙間なく商品を詰めていきます。商品が一気に流れてきて取りきれない時には、ロボットが自分で判断してコンベアの速度を遅くするという気を利かせた開発も。
  ロボットシステムは自社の切削部品だけでなく、大手企業の汎用ロボットや搬送機器、各種のセンサーやソフトウエアを集めて組み上げます。「ロボットシステムインテグレーション」と呼ばれる業態で、機械(ハード)、電気・自動制御(ソフト)という異なる分野の専門知識が必要な難しい仕事です。あらゆる業界で人手不足が深刻ないま、ロボットによる自動化の重要性が高まっています。
 「メカ、電気、制御、製造や組み立てに至るまで、緻密で心がこもっているから、優れたシステムを開発することができました」(遠藤社長)といい、だからこそ人材が「わが社のいち押し」なのです。展示会に出展した仕分けロボットシステムは、実働を開始したコンビニエンスストア向けに続き、すでに大手から複数の引き合いがあるそうです。

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相模原商工会議所