SICかわらばん 発行No.76

『地域企業紹介』にてご紹介いただきました。

「チャレンジャブルマインドで食品産業の発展に貢献」

 

 精密加工・設計開発・ロボット化ビジネスを事業の3本柱とするJET株式会社の代表取締役である遠藤法男社長を相模原市中央区田名の本社工場に訪ねました。


 遠藤社長は相模原市下九沢の出身。清新中学から県立相模原高校を経て、専修大学法学部へ進む。高校時代はサッカー部のF W(トップ)として活躍。当時の監督は、現在の神奈川県サッカー協会会長である坂本紀典氏。とても厳しい指導のもと、精神力も鍛えられたそうで、『大抵のことには屈しない根性がついた』と語る。大学時代はテニスに熱中し、その実力はコーチを務めるほどの腕前。人とお酒を飲んだり話したりするのが好きで、あまり勉強はしていなかったのだとか。もともと父の事業を継ぐ気がなかった遠藤社長は金融機関系シンクタンクに就職。様々な情報を多く持つシンクタンクで働くことで自らの成長と社会への貢献を考えていたそうだ。そんな遠藤社長率いるJETは、昭和58年に父芳雄氏が金属部品加工業として有限会社遠藤製作所を設立したのが始まりだ。創業時から先代と社員3人体制で事業を行ってきたが、突然芳雄氏が病気で倒れてしまう。半年間ほど勤務先と自社経営の掛け持ちをしたが、それにも限界があり経営に専念することを決心する。

 経営への専念を決心した1996年は、バブル経済崩壊後の厳しい時代。部品加工業の将来を考え、小さくて精密な分野に特化する方針を打ち出す。社員には材質の耐久性や限界を知ることの重要性を説き、「壊してもいいから、頑張れ」と全社一丸となって取り組んだ。その結果、主要取引先であるハードディスク関連の装置部品受注実績では、僅か5年間で130社中最下位からトップへ大躍進させた。また、事務系社員も図面データを理解し、納期などの社内リソースを管理できるところもすごい。『失敗を恐れず果敢にチャレンジする会社として経験を積み重ね、引き出しの量を多くすることが大事』と遠藤社長。精密加工の高い技術力とともに、こうした全社員総動員によるサポート体制も同社の大きな強みだ。


 開発設計では、3次元CADなどを活用し、特にビジョンを使った画像認識、精密位置決め処理、高速搬送処理設計などで高い評価を得ている。設計精度を高めることはもちろん、お客様に分かり易く提案するプレゼン力の強化にも努力を怠らない。2007年には社名を変更。Japan Evolution of Technology(ジャパン・エボリューション・テクノロジー)の頭文字をとってJET。日本の技術の進歩を具現化できる会社にしたいという熱い思いが込められている。もともとミクロン
オーダーの精密加工を得意とする同社は、開発設計分野に加え、ロボット化ビジネス事業も展開している。これまでに、食品・医療・薬品・玩具・半導体・液晶・HD・光学・自動車など幅広い業界にチャレンジしてきた経験を持つ。現在は三品産業(食品・化粧品・医薬品)、特に食品産業の自動化に力を入れる遠藤社長は、労働人口減少とともに厳しい労働環境から日本人従事者が減少することによる“生産現場力”の低下を懸念している。食品産業は生活に直結するため、不安定な景気やコロナ禍でも正確で安定した成果の得られる「ロボット活用」が必要不可欠であり、その入口部分であるシステムの全体像を決める構想設計は極めて重要。これが甘いと全てが上手くいかなくなるのだと言う。2016年には、その分野を専門的に担うため、市内企業である永進テクノ株式会社(代表取締役 鈴木 道雄 氏)との共同出資にて、大野最高技術責任者をはじめとしたトップエンジニアを擁する株式会社トランセンドを設立した。同時にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトを通して、独自のビジョンシステムを駆使した「食品工場のコンビニ向け配送仕分けロボット」を共同開発した。数百種類にも及ぶ製品を認識し対応できる優れたシステムだ。


 『ロボットシステムインテグレータ(SIer )として、常にユーザーに合わせたベストソリューションを届けていきたい。そして、食品産業において、ロボットを活用した自動化・省人化システムの更なる普及は労働人口の観点からも必須であり、延いては人口減少をたどる日本の生産力をサスティナブルにするための一翼となる。今後、ロボット活用を積極的に推進する食品メーカーやそれに携わるロボットSIerがさらに増え、食品業界全体に輝ける未来が訪れることを願っています!』と遠藤社長は今後の展望を語る。


 生まれも育ちも相模原という遠藤社長は、相模原市とSICの共催によるロボットSIer養成講座をはじめ、ロボット関連セミナーなどで講師を務める。また、さがみはらロボットビジネス協議会やFA・ロボットシステムインテグレータ協会に所属し、業界の発展にも尽力している。『常に人と人の関係がある。役に立てることがあれば時間の許す限り協力したい』と遠藤社長。ロボットビジネス推進の原動力的存在として、一人勝ちするのではなく、自社の得意分野や強みを活かし、日本のロボット産業振興に大きく貢献している。


 「今日限界の120%に到達すれば 明日はそれが100%になり成長につながる」を掲げるJET。新たな年を迎え、今年も常に“チャレンジャブルマインド”で挑む遠藤社長と社員の皆さんに心からエールを贈ります!

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さがみはら産業創造センター / 地域企業紹介 かわらばん地域版76号 2022年1月 JET株式会社